安全運転シルバー教室
「安全運転シルバー教室」という方必見! みなさんから寄せられた疑問を徹底レクチャーします。
毎年、国土交通省の呼びかけで春と秋に行われる『全国交通安全運動』。 今年は平成19年5月11日(金)~20日(日)が運動期間となりました。この期間、各地で交通関連のイベントが行われたところも多かったのではないでしょうか? シルバー講習実技 さて、交通安全運動の初日・5月11日に行われた【安全運転シルバー教室】上総自動車教習所(千葉県・君津市)に行ってきました! このシルバー教室は君津市の“60才以上の高齢ドライバー”を対象に、市や警察署の協力で上総自動車教習所をはじめ、交通安全協会その他の団体が主催するもの。 (※ただし“免許更新時の高齢者講習(必須)”とは異なります) イベントとしては今年で3年目を迎え、認知度も高まってきています。今回は約40名の方々に参加していただきました!
13:00~13:25 開会式
まず初めに開会のご挨拶をいただきました。
「高齢者の交通事故が多いとはいえ、
“クルマがないと何もできない”という人は多く、
90才を過ぎても乗っている人がいる。
高齢者の事故は被害者だけでなく、加害者になるケースが多い。被害者・加害者問わず、周囲には不幸なこと。
高齢者が生きがいを持って地域に密着し、“生涯健康”をモットーとした健康づくりが
できる市にしていきたい」(君津市副市長)
高齢者の生涯健康づくりを目標として、予算が増額されたそうです。
さすが!頼もしいですね。
「君津市の人口は約9万1千人。そのうち免許を持っている人は約6万人ということで、
人口の65%が免許を持っていることになる。
千葉県の3月までの統計によると、人身・死亡・物損の交通事故は36400件で、そのうち20%がケガを伴う人身事故であり、そのうちの死亡事故は昨日(5/10)までで89名。またそのうちの40名が65才以上だった。
つまり、全死亡事故の45%で高齢者が被害にあっている。
発生頻度でいうと、1日当たり404件、1時間あたり17件、4分に1件事故が起きている。
この講習を“今一度、基本に立ち返る”貴重な体験としてほしい」
(君津警察署長)
千葉県は、全国的に見ても“交通事故が多い”県。事故を減らす取り組みの成果が出てきていますが、それでも高齢者の事故は後を絶たない様子です。
自分や家族を守るためにも、このシルバー教室で何か役立つことを身につけていってほしいですね!
13:30~15:50 実技及び屋内での講習
参加者の皆さんにゼッケンをつけていただき、教習所の場内コースで実際にクルマの運転をしてもらいます。
「オートマ車に乗っている方」「ミッション車に乗っている方」で乗るクルマを分けたのですが、こそっと「オートマってなんだべ?」とつぶやいている方を発見(笑)
AT車がこれほど普及したのはここ10年ほどなので、わからなくても当然ですよね。
隣には教習所の指導員が同乗し、コース図にそって運転しながら、ひとりひとり運転項目についてコメントをもらいます。
…これは緊張しますね!
しかし順番を待っている間は、参加者同士おしゃべりをしたり楽しそうな様子。
3回目の開催とあって、「今まで全部参加してるんだよ」という方もいらっしゃいました。
実際に運転する際の運転項目はコチラ。
- 乗降などの安全確認
- 一時停止
- 坂道発進
- 屈折・曲線コース
- 見通しの悪い交差点
- 交差点の安全確認
- 踏み切り
ゆっくりゆっくり、慎重な運転をされる方もいれば、ビューン!とばかりに最高時速30km制限の場内コースではありえないほどスピードを出される方も。
中には「右折したときに間違って右車線に進入してしまった」、「停止線を意識しすぎてかなり手前で止まってしまった」という場面もありました。
どうしても緊張があったのでしょうね。
運転を終えて帰ってくると、みなさんホッとした笑顔になってましたよ
さて、運転を終えた方にちょっと聞いてみました。
普段の運転と比べていかがでしたか?
「自分のクルマのようにはいかなかった。慣れてないから」
「(縁石に)乗り上げてしまった」
「いつもと違ってスピードが出せない」
「普段は軽だからクルマのパワーが違うねぇ。新しいクルマを買いたくなっちゃうよ」
と、みなさん少々興奮ぎみ!
実技を終えた人から“夜間視力検査器”での視力検査を受けていただきました。
これは明るいところから急に暗いところに入ったような時の視力の低下(暗順応の検査というそうです)を測定するもの。
検査の様子を見ていると、やはり「一番はじめが見えにくい」とおっしゃる方が多くいました。検査が進むうちに目が慣れてくるのですが、運転中は“一瞬、見えなかった”というだけでも事故の危険があります。
夏などの明るい日中、急に日陰の道に入ったときに目がくらんだ…などが想定されますよね。充分、注意が必要ですよ!
屋内での安全教室(講義)
実技が終了したら次は君津警察署の交通課長による講義です。
興味深い身近な事例を紹介しながら、参加者のハートをつかんでいきます(笑)
「信号無視の罰金は9000円、どうせ払うんだったら罰金ではなく、お孫さんにおみやげでも買ってあげた方がいいですよね。飲酒時の場合はさらに罰金の額が違ってくるよ」
というようなわかりやすい話とともに、「○○の交差点あるでしょ、あそこで…」というような地域の警察ならではの交通事故の事例は臨場感があります。
「高齢者同士で乗り合わせたクルマが事故を起こし、死亡事故につながるケースもある。認知症なのかどうかは定かではないが、高速道路を逆走するようなこともある。そろそろ運転が危ないなと思っても、クルマは生活に必要だからどうしても乗ってしまう。
運転するときは、“自分は運転が下手だから注意しよう”という気持ちでいた方がいい。夜間や雨のときは視力が低下するから避けた方がいいし、クルマの乗り降りがつらいなど身体的な機能の低下を感じたら思い切って運転をやめるという判断も必要」
参加者のみなさんは、うなずきながら真剣に話を聞いていました。
高齢になればなるほど、買い物や病院へ行くなどクルマの必要性は高まります。みなさん、「事故は怖いけどクルマは必要」という立場なんですよね。
体調の変化や天候にも注意して、より安全を心がけて運転してくださいね!
15:50~16:00 閉会式
本日のシルバー教室を総合して講評をいただきました。
「かなり昔にこの自動車学校を卒業されたという方に、“当時はすぐにつぶれるんじゃないかと思ったが、今は活気がある”と言っていただけた。
最近は特に教習生が増加し、すでに今年に入ってからの卒業生が1000名を超え、入校者数は県下トップクラスとなっている。
地域に貢献したいという思いから、去年は地域の活性化につながる【まごころ券】という地域通貨の発行を行い、今回もシルバー教室の開催をさせていただいた。
今後も地域に貢献できる教習所として発展していきたい」
(上総自動車教習所・大鐘管理者)
それぞれの地域で、自動車学校が「安全センター」の役割を果たしていけるのが理想。
免許を取って卒業したらハイ終わり、というのではなく、利用者が気軽に足を運べる場だったらいいですよね。
「60才を過ぎると意固地になり、視野が狭くなり、耳も遠くなり、高齢者と呼ばれる
年代になる。自分が正しいとばかり思わず、見通しの悪い交差点では、目だけではなく
顔全体を動かしてみるなど、工夫が必要。
高齢者の交通事故は、自宅の周辺500mあたりが最も多い。免許を取ってから何年もたち、家の近くでは特に“慣れ”が出てしまうことが原因のひとつ。
毎回、免許を取得した原点に立ち戻って運転してほしい。
また、高齢者運転の証である『もみじマーク』、これは『枯葉マーク』と言われて嫌がられることもあるが(笑)安全運転模範者の印として堂々とクルマにつけて運転してください」
(君津警察・星野交番所長)
結びには、
「人生今が盛り 困難があっても挑戦したい いつも青春」
(安全運転管理者協議会・森山副会長)という力強い言葉をいただき、閉会となりました。
今年で3回目となる交通安全シルバー教室。
初回に比べると知名度も高くなり、それに伴って参加者の意識も高くなってきたように思います。
指導員を隣に乗せて実際に運転し、それを他の参加者に見られているという状況はとても緊張するはずですが、「自分の運転を客観的に見る」という貴重な体験になります。
他人の運転を見たり、自分の運転を評価されたり、実際の事故の話を身近に感じたり…普段、同じ道をなんとなく運転してしまうことの多い人には大きな刺激となったのではないでしょうか?
高齢化の進む日本では、ドライバーの高齢化とその安全対策が重要視されています。
そうはいっても、どのように対策を進めていくべきなのか? 国の政策としても、まだ方向性が定まっていないような気がします。
私たちのような現場に近い立場から感じるのは、
「高齢者自身が、こういったシルバー教室に参加される意識を、まず持つこと」が第一歩だということ。
関係ない、面倒くさい…そういった気持ちは理解できますが、参加する・しないによって今後の運転への取り組み方が大きく異なってくると思うのです。
そして、高齢者自身の意識を高めるために私たちができるのは
「シルバー教室を継続させること」。
せっかく関心を持ったとしても、参加できる交通安全講習がなければ何にもなりませんよね!
“継続は力なり”。
高齢者講習も、決して例外ではありません。
取り組みが継続していけば、私たちを取り巻く交通社会が変わってくるはず。
地道な運動かもしれませんが、より安全な交通社会を作っていくために、理解と協力を今後ともよろしくお願いします☆